11月5日 失敗したこと

酒場 ふくろ

食べログ 酒場 ふくろ

11月5日(雑誌が刷り上がった次の日) 呑んで失敗する・・

いきなりですよ!いきなり!どうですか?本ができるまである程度酒呑みを自粛してきた俺は「これで解禁!」とばかりにまず写真表紙をとってくれたカメラマンKくんに「できたから!渡すから!酒呑もう!」と誘いをかける。戸惑うKくんだがなんとか誘いにのってくれた。
昨年夏になんのことやらよくわからないまま呑みやで写真を撮らされた彼。変な本をたくさんもってきてああでもないこうでもないと銚子やつまみとともにスタイリング(!カッコイイ!)をしている俺に辛抱強くつきあってくれ、雰囲気のある写真を何カットもとってくれた。そのあとその酒場でやった飲み会でも「わははー」と呑みまくる俺と友人(スタイリングをつきあってくれた)を横目でみながら料理やメニュの写真をとってくれた。それからあまり連絡をとらず彼には申し訳なかった・・。いよいよ堂々と本がわたせる。「妄想じゃなかったんだよ!」と宣言できる。まあ1年以上もかかってはしまったが・・もうあの話はたちきえじゃないの?と友人たちがみんな疑惑をもっているように最後のほうは思えてしまった、苦しい気持ちの俺だった。リトルプレスをつくっている人たちはみんなそこのところが一番苦しいと声をそろえていう。無料で記事をかいてもらったり協力してlくれた人々が「まだなの?」ときくが、もちろんきくのは当たり前だし彼らは責めるつもりなんて全くないんだろうが、こちらは責められてるように感じてしまうのだ。そして段々人と会いたくなくなる・・それを苦にして失踪してしまった人もいるという(嘘)表紙をとってくれたKくんなんてそのさいたるもんで、本当会いたいけど会いたくなかった人だったんで一挙に「会いたい!」ほうに針がふれてしまった。
池袋で待ち合わせ。俺の大好きな「ふくろ2号店」に行く。どんと10冊わたすとじっくり眺め早速誤植に気がつく細かすぎるKくん。「ああ!」と耳をふさぐ俺。「校正はしたの?」「・・一応自分で・・」「校正は自分でしたらいけないんだよ。無理だから。全くの他人にしてもらわないとね」やさしく諭しながら本をめくり続けるKくん。とにかくとにかく酒を飲もう!俺は以前きてきにいっていた「ホッピーウイスキー割」を頼む。トリスの小瓶(でも300ミリはありそう)とホッピー1本と大きなバケツみたいのいっぱいに氷でてきて700円くらい・・(すいません。覚えていません)信じられないくらい安い!Kくんは熱燗を。酒の銘柄が選べないのがわずかに不満そう・・スタイリッシュなKくんだ。
「僕に頼めばよかったんだよ。こういう重箱つつく作業大好きだから」そうか!Kくんに頼めばよかったのか!こんな作業好きな人いないと思ってたよ。それからたたみかけるようにKくんの攻撃が続く。「この表紙の小魚さあ」「?」「あんんたたち撮影してる俺のうしろで外したあと食べながらしゃべってたでしょう。うまい!とかいってさあ。ちょっと・・っていうかかなりむかついてたんだよね」・・そんな・・今さらいわれても・・Kくんの恐ろしさが身にしみる夜だった。それからあとの記憶がはやくもないのだった。
そのあと「カクテルが呑みたい」というKくんの言葉にしたがってバーにいったと思う。気がつくと俺はどこかの地下鉄の駅にたっていた・・手ぶらで・・え・・どうしたらいいの?バッグはどこにいったの?財布、携帯は?どうやって帰るの?駅員に「忘れ物はないか」と聞く俺。駅員はめんどくさそうにどこかに電話して「今のところ届いてないですねー」と答える。悲しみに頭がしびれそうな俺。とにかくとにかく自分の沿線に届くN駅にいかねば。多分それが11時半くらい。気がついたら1時近くにN駅ホームにたっていた俺。1時間近く何をやっていたのか、のりすごしまた反対方向にのりまたのりすごす・・そんなことを繰り返してきたに違いない。最後の力をふりしぼってN駅の忘れものセンターにいく。「あの・・忘れものは・・」てきぱきと作業してくれる駅員。さっきと違い電話ではなくパソコンを使っている。そして「バッグの色は?かたちは?あなたのお名前は?」と質問をあびせたあげくに
「届いてますね」
「えー!」その場で座り込んで号泣したくなった俺。「と!とりにいきましゅ!」
「いや、もうだめですね。すべての終電は終わりました。忘れ物センターにもうひとはいません」
がーん。「あ・・あのわたしゅはどうすれば・・財布もなにもないんですけど・・」
駅員は無言で電話をさしだした。「とりあえず家族に電話して、タクシーで帰るしかないですね。改札は出してあげますから」「・・」何度もプッシュホンを押し間違える。駅員はやさしく辛抱強く見守ってくれた。とにかく・・とにかくでもでてきてよかった。うれしさとかなしさが交差する。やがて真夜中の電話に夫がでた・・
その先のことはもうあまり書きたくない。とにかくまだ俺はまだ生きています。翌日のことはまた今度。Kくん表紙撮影本当にありがとう。でもやられたよ・・。あのあと財布からバーの会員券でてきよ。500円割引だって。今度いけば・・。

追記 Kくんの許可をえたので本名をだします。やな感じにかいたけど本当はいい奴です。

表紙撮影 黒田泰司 Web Galley http://yasushi.truecolors.in