君は唾液酒を吞めるか?

グレートジャーニー 人類5万キロの旅 1  嵐の大地パタゴニアからチチカカ湖へ (角川文庫)

酒好きの自分のひとつのテーマとして、「ひとが何かを噛んでつくった酒を呑めるか?」という問題がある。繰り返し考えてきたテーマだ。というのは俺は世界の冒険ノンフィクションを読むのが好きだ。アマゾンとか東南アジアとかアフリカとか・・。(すみません、アバウトで・・)そういう地域の原住民と裸でつきあう。大事な食糧を客に出すのは現地人の最大のもてなし。冒険者たちは、喜んでそのもてなしを受ける。イメージとしては、大きく燃え上がるかがり火、それを囲む現地の人々と中央に座る長老、長老に続く良席に座る冒険者、火の上でじりじりやけるのは、野ブタとか大きな猿とかそんな感じの貴重な獲物、もちろん芋虫など大切なタンパク源である昆虫も笹の葉とかに包まれあぶられでてくる。そしてもちろん酒!村あげての宴会にはもちろん酒!そしてその酒は・・女たちが木の実などをよくかんで「ぺっぺっ!」としてどろりとした唾液をつぼにたらしつくった「秘酒」にきまっている。ここで俺は苦悩する。人はどうなんだろうか。俺は本を読むときにはいちじるしくその本の世界に入り込む。自分が完全に主人公になってしまうのだ。そこで冒険ものの読書のなかで必ず苦しむ。ああ・・どうしたらいいんだろう。人の唾液が大量にはいった酒・・でも酒だ。苦しい冒険の末に解放された宴会で呑む酒・・酒も飲みたいしせっかくのもてなしを断るのも辛いし怖い・・。どうしたらいいんだ・・。冒険ものの現地人と触れ合う話だと怖いくらいのパターンででてくるこのシュチュエーション・・。この酒は俺は呑めるのか・・。 

俺は実は「人が使った食器」が苦手だった。小さいころは絶対に自分の食器でなければ無理だった。家族のものでも人の皿やましてやコップからでは飲食できない。出産育児をしたりした経験でかなりそのへんは緩和され、今はだいぶ大丈夫になった。家族の皿でも食べられる。しかし数年前に「お弁当たべそこなったから食べて」といわれ友人に手作りの弁当箱(いつも友人がつかっている)をわたされ、それを食べるのにちょっと苦労したこと。そしてごく最近だが、社食の味噌汁のお椀の呑み口がいちじるしくはげていて、「ここにいろんな人の口がついたんだなあ」と思ったらどうしても食べれなくなってしまったこと。とごく最近もその余韻は残る。そこにはかなり「唾液」が関連していると思う。思い出せば5歳違いの弟が赤ん坊のときものすごくよだれをたらしていた。5歳の俺はそれがいやでいやでだまらずそこから「人の食器はいや」というのが生まれてしまったのだった。そんな「唾液がいや」の自分が唾液酒を呑めるのだろうか。でもキスは大丈夫なんだよね。ディープでも。唾液をどんどん交換しあうディープでも。とふと思う。むしろ好きだ。この矛盾。だったら酒も大丈夫だろうか。考え方さえ変換すれば・・頑張れそうだぞ、冒険してる俺!しかしうまいのかなあ・・。

つまり何がいいたいかというと、関野吉晴さんの「グレートジャーニー1」(角川文庫)を読んでまたその苦しみの決断にさいなまれたわけなんですよね。昨日。本書は「人類5万キロの旅」という副題がつけられている。我々の遠い祖先新人類は700万年前にアフリカで生まれたといわれている。「そして彼らはアフリカ、アラスカを通って、南米大陸パタゴニアに至る5万キロの大旅行に出発した。」と吉野さんは本書で書いている。吉野さんは、このルートを逆に南アメリカからアフリカまで自分の足・カヌー・自転車など人間力のみで、進んでいこうと決心してそれを実行した人だ。俺はこの偉業を「すごい」と思っていて憧れ尊敬している。しかしこの冒険をTVではみたが、写真集であった著書はちょっと高くて買えなかった。それがこのたび心の友「文庫」になって、ようやくじっくり読めるようになったというわけです。そしてやはりアマゾンの唾液酒はでてきた。おはー。「オビラキはユカイモから作る。女たちがゆでたユカイモを口の中でかみくだき、つばとよく混ぜあわせて容器にはきだす。つばに含まれる酵素がイモを醗酵させて、三日ほどで酸味のある酒ができる。」(本書より)おはー。どうしたらいいんだろう・・ちょっとイメージ的にはマッコリみたいな感じですよね。マッコリ大好きなんだけど・まあ、目をつぶって呑んでみるか!酔っちゃえばわかんないかもだしね。

 毛虫のはいったテキーラを「いやだ」と心底いっていた人がいたが、俺は全然平気だ。猿の丸焼きも大丈夫だと思う。しかし唾液に対しての恐怖は深い・・人にはそれぞれの感覚の違いがあるものだ。ところで俺は「グレート・ジャーニー」を1、2巻と買ったつもりで、1巻を唾液の恐怖を超えておもしろく読み終え「さあ、次!」と2巻を手にとったところでそれは1巻だった!!!同じ本を2冊かってしまったのだ。なぜそのことを言ってくれなかったのか。文教堂新横浜支店レジ嬢!!俺は絶対仕事上の規範としてそういうお客には声をかけるぞ!(自分を見るようだから)だめだな!レジ嬢!・・とてもしょんぼりしてます。レシートも捨てちゃったし・・まだ2巻かってないです。早く続きが読みたいです・・。