金原ひとみさんの最新作にうなりました

yom yom (ヨムヨム) 2009年 12月号 [雑誌] 
 それにしても部屋が汚い。久しぶりに4日連続して働くという毎日があけて今日やっと休みだったのだが、その間ほとんど家事をせず、そういう事でこういう結果になるのかと呆然としつつ正午1時目がさめた次第。自分のいましめのため一部写真におさめこのブログで公開しようとまでおもったのだが、さすがにやめました。

 ヨムヨム13号をまた楽しみながら少しずつ読んでんだけど、驚いたのは金原ひとみさんの「仮装」だ。あの「蛇にピアス」の芥川作家、耽美堕落美女派ともいえる彼女がこんな作品を書くとは。育児に疲れ果てた妻が家出、2歳の娘と取り残された夫が、育児と仕事と生活に翻弄されるいらだちの日々を綴ったものだけど、2歳児の恐ろしさー何でもやだやだいって、何もできないくせに自分でやるっていって、思い通りにならないと泣きわめくー、それについて殺意さえ抱いてしまう親の気持ちが完全にリアルに表現されているのだ。文章はあいかわらず奔放しかし正確な金原ひとみさんのものであるのだけど、え、御洒落耽美派の彼女がこんなテーマ書くの?ってかなり驚いたのさ。でも考えてみたら子供のどうしようもなさって(大人からみてってことだけど)SEXと同じくらい野生と衝動にみちているし、それを書かせたら天下一品の金原さんだからこそこんな風にリアルに書けるに違いない。もう忘れていた、働きながら子供育ててた自分のいらいらした気持ちがよみがえり怖くなるほど。あと家出されるまでは妻の育児をかえりみないで、いきなりその日常に放り込まれた夫のうろたえ困った様子や、妻に「悪かった、帰ってきてほしい」と懇願する気持ちなど読んでると、自然夫の顔が浮かんできてざまあみろと思ってしまう。

その夫だが、最近とみに仕事状況がひどくなっていて、休みもなく朝6時に家をでて夜中1時すぎに帰る日々。しかし俺はどうも優しさもひとかけらもなく「自分は仕事だけしてられて、いいよなー。ちゃんと家の事もできるように仕事調整してくれよ。休んでくれないとこっちも困るんだよ」と思ってしまう鬼嫁。

だってさーこっちは仕事しながら、「今日のごはんどうしよう明日のごはんどうしようああ洗濯しないともうきるものがない台所がきたないとりあえず夜中でも洗いものだけはしなくちゃ夫が帰るまでに風呂掃除してわかさなくちゃ」とか日々考えがつきることはないわけでしょう。そういうのいっさいなくて働けるのっていいよなあとずっとずっと思ってた。その憎しみが最近の夫の労働のひどさとあいまって、金原ひとみさんの作品に触発されてつのっている昨今。なかなかぎすぎすしている俺のファミリーだ。いやしかしおもしろいから「仮装」読んで下さいよ。

ところで今年のミステリベスト10などにもランクインしまくりの「川は静かに流れ」(ジョン・ハート 早川文庫)読みましたよ。うーん。どうなんだろう。まあおもしろかったけど、そんなに絶賛するようなものだろうか。しかし基本的にでてくる男たちの呑むものがほとんどバーボンであることはとてもよかった。バーボンなんてこういう男マッチョのアメリカ南部もの小説でしかもう出てこない酒なのかもしれない。だけど俺はバーボンが好きだ。バーボンの好きな人は呑みながら読むといいと思います。あとこういう小説にでてくる男ってビール飲みながら運転してることが多いんだけど、アメリカは今でも飲酒運転に寛容なのだろうか。タバコにはあんなに厳しいくせに。わからない国である。

川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)