yom yom最新号を読んでみた。

yom yom (ヨムヨム) 2009年 10月号 [雑誌]
二日かけて「ハチ」鑑賞の日に買った「yom yom vol 12」最新号をだらだら読んだ。yom yom はおもちゃの缶詰みたいで、おもしろいものがいっぱいつまっている、読み応えのある、でも気のおけない雑誌だ。
 私の趣味として本の中の酒やおいしそうな食べ物を探し追及する「酒・うまいもの採集於書籍」があるので今回は「yom yom vol 12」をその事中心に紹介します。
 
最初のエッセイが瀬戸内寂聴先生で、おもちゃのかんづめにしては重厚でいきなりたじろぐが、川上未映子「ヘヴン」を絶賛していて「ふーん」と感心。読んでみたくなる紹介だった。しかしこの文章をかくにあたって寂聴という名前の字をはじめて意識した。さびしくきくってなんかすてきだ。酒とうまいもの要素はなかった。量・4頁。

小池真理子「青いトマト」量・27頁。ビールの好きな肉体労働者に恋しておきながら、その男にワインやシャンパンの味を教え込ませるという、いけすかない女の話。女(独身)は案のじょう男にふられる。女は大学教授で、男と結婚したく切望し「学歴は関係ない」と繰り返すけど、「ビールじゃなくてワイン・シャンパンよ」と酒に貴賤をつける時点で「学歴は関係ある」と明白である。肉体労働のあとはビールが至宝であるとわからないのは頭が悪く勘の鈍い女である。酒を学歴のように差別意識すると不幸になるという道徳の綴り方のような小説。小池真理子っていつも綴り方って感じがする。わかりやすく何もない。そのあと重松清だったがまだ読んでいない。並びがよくないと思う。

森見登美彦が富士山に編集者に依頼され登っている。山小屋では二枚の布団に5人が寝るらしい。富士山登りたくない、絶対。カップラーメンが800円するらしい。それが「五臓六腑にしみわたるおいしさ」らしい。すごくよくわかる気がする。そのおいしさだけ頂いて富士山には登りたくない。量・8頁。

川本三郎さんの奥さまが亡くなられたらしい。ご自身の随筆が掲載されている。量・14頁。ご自身の随筆でその事実がはじめて世に明かされるというやり方が川本さんらしい。まわりの編集者も川本さんを守っているのだろう。病院通いの日々、「ガラスケースの中に肉じゃがや冷ややっこなどシンプルな惣菜が並んでいる」食堂にひとりで寄り、1本の燗酒を呑むのが習慣になった川本さん。毎日妻を見舞うのは苦ではなかったが「ただ、私なりに一人だけのくつろぐ時間を持ちたい。ほっとひと息つきたい。わずかな瞬間でも癌のことを忘れたい」。全ての酒場のカウンターはそんな気持ちを包み込んでくれる。下手なカウンセラーにかかるより独りがいい。

栗田有起さん。本当におもしろい。文章がおいしいスイートみたいだ。果物がとても食べたくなる小説。26頁。
 日記に目がない(読む方)俺には、とても楽しめた「日記特集」。さまざまな記事があった。いしいしんじさんは日本酒で野外宴会をやっていた。高山なおみさんの素晴らしい日記本の愛読者だが、その最新1カ月分を読めて満足。相変わらず毎日おいしいものを作って食べていらっしゃる。スーパーの焼きそばとか買って食べていらっしゃったのに勝手に親近感を覚える。中島京子氏の日記小説、おもしろし。アメリカで開かれた動物作家会議に参加する日々を綴ったものだが、その中で蛇作家が「私たちにとって飲酒は創作と切り離すことのできない大事な習慣である」と主張するのがこころに残った。ほしよりこ氏のまんが旅行日記の量(42頁)に圧倒される。完成させるまでどれくらい時間がかかっただろうか。編集さんとの会話がとても詳しくかかれているがいちいちメモをとっていたのか。ICレコーダー?記憶?絵が下手だけど俺もこういうのかきたい。小さなスケッチブックをかおうか。

「天使のおやつ」泣いた。理不尽な人生の事故に何とかおりあいをつけて生き抜こうとする男の物語。沢木耕太郎。40頁。

 都築響一さんのエッセイで、ひとつ知った事。稲垣足穂は大酒呑みでちょっとでも金がはいるとぜんぶ飲み代に使ってしまったらしい。カーテンが掛け布団代わりで、広辞苑を枕にしていたという。素晴らしいが広辞苑枕は首がつりそう。

ととても充実した「yom yom vol 12」でした。おもちゃ箱を開いて感じることは人それぞれだと思うので、酒でも飲みながら感想を語る会をしたくなった俺だった。