あえなく辞めた俺と蟹工船

蟹工船・党生活者 (角川文庫)

みなさま。1カ月ぶりのごぶさたでした。おばさん、10後半から11月前半においてやっと仕事についたものの、「ハードワーク」という言葉の意味を初めて身体でしりました。そしてとても簡単に降参しまして、やっとつかんだ仕事をとっととやめました。そのすがすがしい詳細はまあどうでもいいのですが、まあ「どぶ」のような職場だったとだけいっておきましょう。
 
 ということで、「ハードワーク」にうちのめされた俺はまた暇になったのでおくればせながら「蟹工船」を読んでみました。書店員の時ある時期からこの本はすごく売れ、その時は全くぴんとこなかったのですが、なんというかあまりにも「ハードワーク」(しつこい)だったので 「死にそうにくたくたの俺」は働いている時もこころから 身震いするほど この本を読みたくなったのであった。あの「ブーム」の時、買ってくれた人々はこんな気持ちだったのかなとのんきな書店員だった過去の俺に「駄目だな」とつぶやいてみる今日このごろ。でも買ってくれたのはおじさんが多く、基本的に「おおこれかー」とにやにやしている人が多かったのでそうでもなかったのかもしれない。
 
 そんでまあ結論としては、俺の「ハードワーク」がレベル3くらいとしたら、この本はレベル550という感じでしょうか。俺は仕事しながら「身体と心にきつい仕事してると本当自分こわれそうだなあ」と実感するレベルだったが、蟹工船では本当死んじゃいますから。しかも逃げられないから。でも多分以前の俺なら「ハードな仕事したら死んじゃう」ということが全く実感できなかったと思うんだよね。ファンタジーとしか読めないというか。しかし今はばりばり辛さが伝わってきて、本当に自分が死んじゃいそうな気がする。読んでると。死なないためにはどうしたらいいかという事を多喜二は頑張って書いたんだけど、そういう事を書くのはいつの世でも危険な事で、ハードワークが当たり前、「おかみに逆らうな」の当時の日本で多喜二は殺されてしまう。そして今ハードワークがまた(昔とはレベルが違うにしても)増えていて、この本が再度読まれるようになった現代、多喜二が弾圧された時のような「言えない」ような空気が再度漂っているような気がしますね。ビラ配っただけで逮捕されたりね。あ、あの方たちも共産党でしたね。
 
 でも多喜二、こんな事俺に言われたら怒ったと思うけど文章うまいね。荒れ狂う海の描写力とかすごいですよ。詩人のおもかげもあるし。「波は風呂敷でもつまみあげたように、無数に三角形に騒ぎ立った」とかいいでしょう。海の1冊として「老人と海」と並ぶ名作でしょう。あと、船全員で大酒を呑む夜が一夜あるんだけど、そのリバースの描写とか容赦ないですよ。これ読んで平然と酒呑める人がいたら本当の酒呑みですね。みんな「我こそ」と思うものは読んでみてください。
 
 ということで呑気な俺にもどったので、また呑気なブログを始めようと思います。本屋でも週3日働けることになったので、また本情報ももりもりと。